本研究の目的である、大学ソーシャルワーカーの業務確立のプロセスと直面する課題を明確化するために、大学ソーシャルワーカーを対象とするヒアリング調査を行った。質的データの分析にあたっては、KJ法を用いて大学ソーシャルワーカーの業務が学内に認知され、定着して、発展していく段階それぞれについて課題と取り組みを整理した。 大学ソーシャルワーカーは配置部署や目的は多様であったが、大学というコミュニティを拠点として、ミクロレベルではニーズを抱えた学生に対してサービス提供やコーディネートを行うこと、メソレベルでは、それら学生相互の集団の場を支えるほか、教職員や保護者へのコンサルテーションを行うことによって、学生を取り巻く環境を調整して行くこと、マクロレベルでは、これらの活動を通じ、また業務統計や業務報告を提示していくことで、教職員全体の意識改革を行い、ひいては学校組織や学校風土の改革へと働きかけていくことに取り組んでいた。 業務確立のプロセスは、配置当初の「導入期」、活動を定着させていく「定着期」、組織としての持続可能性やさらなる学生ニーズへの対応を広げていく「活動展開期」と位置づけることができた。各期とも学生や教職員への周知が課題となっていたが、「導入期」には学生や教員への周知で利用実績を高める工夫が、「定着期」には教職員や他機関等との連携を高める工夫が、「活動展開期」には新たな活動の企画立案や外部機関とのネットワーク化の工夫がみられた。こうしたノウハウを共有するためのスーパービジョンや広報ツールの開発が求められていた。 本研究ではこれらの知見に基づき、キャンパスソーシャルワークネットワークの協力を得て、広報用のリーフレットを作成した。この資料は既に大学ソーシャルワーカーらに活動内容の周知を得るために活用されており、今後も大学ソーシャルワーカーの活用に向けて有用な基礎資料となると考えられた。
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