Segerstrome(2008)は,情動ストループ課題(ただし,紙版)を用いて,楽観性が高い人において,ポジティブ単語における情動ストループ効果(ニュートラル単語よりもポジティブ単語において平均反応時間が長くなる)が見られることを示している。Segerstrome(2008)の情動ストループ課題では,紙版を用いたため,反応時間を正確に捉えることができないという問題点やポジティブ単語,ネガティブ単語,ニュートラル単語をランダムに配置してないという方法論上の問題点が指摘される。そこで,外山(未発表;昨年度実施)は,PC版情動ストループ課題(ただし,色命名反応ではなく,キー押し反応)を用いて検討したところ,同様の結果は示されなかった。 そこで,本年度は,情動ストループ課題にかわって,注意の切り替えと定位ならびに注意の解放の困難さを測定できるとされているgap-overlap課題を用いて検討することで,楽観主義者および悲観主義者の注意バイアスについてより詳細に検討した。 本研究の結果より,従来の知見と一致して悲観主義者は,ネガティブ単語によるバイアスが見られることが明らかになった。また,楽観主義者においては,ポジティブ単語によるバイアスが見られるが,ネガティブ単語によるバイアスも見られることが示された。このことより,悲観主義者は環境のポジティブな側面よりネガティブな側面を捉えるのに対して,楽観主義者はポジティブとネガティブの両方の側面を同じように捉えることができるものと考えられた。
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