日本看護協会が2008年に実施した調査によれば、全国の病院における常勤看護職員の2007年度の離職率は12.6%であり、新卒看護職員でも9.2%であった。また、中央ナースセンターが2004年に全国の病院を対象として実施した調査によれば、看護師の離職理由として身体的健康が増加傾向にあると回答した病院は6.2%であったのに対し、精神的健康が増加傾向にあると回答した病院は29.1%であった。したがって、本研究では、看護師の精神的健康を良好な状態で維持するための対策を明らかにすることを目的としている。特に新人看護師に焦点を当て、職務への適応が、看護師同士の人間関係から生じる心理的なストレスに及ぼす効果を検討している。今年度は、複数の業務が一度に重なるなどのような職務の遂行が困難な状況でとる対処によって人間関係による心理的なストレスがどのように異なるのか質問紙調査で検討した。また、同じ調査で、心理的なストレスは日常レベルの簡単な行動におけるミスの傾向を高めてさらに悪循環を生むという仮説についても検討した。調査は2010年9月3日に開催された看護師を対象とした講習会で許可を得て実施し、77名から回答を得た。分析の結果、職務の遂行が困難な状況での対処によって人間関係による心理的なストレスの程度が異なることが明らかになった。また、対処の違いはミスの傾向に影響しないが、心理的なストレスはミスの傾向を高めることも示された。以上の結果については報告書としてまとめ、今回得られた知見を調査の協力者に渡して現場へも還元した。その他に、今年度は査読付学術雑誌で1件、国外の学会で1件、国内の学会で1件発表した。
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