日本看護協会が毎年実施している調査によれば、近年の看護師離職率は約10%で推移し、ほとんど減る兆しがない。特に、新人看護師の離職率の高さは大きな問題となっている。そこで、本研究では看護師同士の対人ストレスに着目してきた。具体的には、平成23年度まで看護師を対象に実施してきた調査により、たとえば、複数の業務が一度に重なるというような職務の遂行が困難な状況において看護師がとる対処と、看護師同士の対人ストレッサー及びバーンアウトの傾向が関連することが示された。 平成24年度は、これまでの調査結果を踏まえ、新人及び他部署からの転入看護師19名(以下,新入看護師)を対象にシャドウ研修を実施し、効果を検討した。シャドウ研修は先輩看護師の後に新入看護師がついて仕事の運び方を観察するというものであった。具体的には、新入看護師自身が普段つまずく点について話し合う事前学習、自分達がよくつまずくポイントを観察するシャドウイング、観察した内容を持ち寄って話し合う事後学習の3部で構成されていた。効果については、研修の前後比較及び半年後の追跡調査により、対人ストレッサー、バーンアウト等のデータを集めて検討した。 その結果、追跡調査でバーンアウトの下位因子である情緒的消耗感について若干の増加が見られた。したがって、バーンアウトへの効果は短期的なものであると考えられる。情緒的消耗感はバーンアウトの他の下位因子に影響することが先行研究により示されているため、研修の数ヶ月後にはさらに対策が必要となるといえる。また、新入看護師によって観察された内容をテキストマイニングにより分析したところ、先輩看護師本人の動きと共に、他者にどう動いてもらうか、そのタイミングをどうするかという点に注目が集まっていた。この点からも対人ストレスとの関連が示唆されたといえる。
|