研究概要 |
当初の研究計画の予定通り、プロダクティブ・アクティビティを行なっているシルバー人材センターの高齢者279名に対する第2波調査を10月頃に実施した。調査内容は、シルバー人材センターにおける活動内容(針金,2009)、活動頻度(Reitzes & Mutran, 2004)、役割アイデンティティ(中原,2011)、主観的well-being(中原,2011; 古谷野他,1989)であった。縦断データを用いて、構造方程式モデルの因果分析を行なった結果、高齢者のシルバー人材センターにおける活動は、活動の中で、役割アイデンティティ(シルバー人材センター活動者としての自己のイメージとして定義される)をポジティブに構築することを通して、主観的well-beingを良好にしているという活動理論(Activity Theory of Aging; Lemon et al., 1972)の仮説が実証的に支持された。今後、調査でも測定している細かな活動内容に関して分析していくことで、どういった活動の仕方が役割アイデンティティの構築には有効であるか、より具体的なレベルで検討ができると考えられる。本研究の結果は、今後ますます増加する退職後も就労意欲をもった高齢者に対して、どういった形での就労提供が彼らの主観的well-beingに対して有効であるかを探るための重要な意義を持っていると考えられる。 また、上記の結果に関しては、日本社会心理学会第53回大会(つくば国際会議場)において、分析結果の一部を発表し、第24回日本発達心理学会大会(明治学院大学)の際に、今後の研究遂行に向けた議論を行なった。
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