自尊感情と,恩恵享受的自己感(自己を含み込む自己の環境や関係性を肯定する自己感情)とを区別し,自尊感情が低い者の自己形成過程において自尊感情が低いことの問題はどこにあるのかを検討した。 自尊感情が低くとも恩恵享受的自己感を高くもつ者は存在し,その者の心理的健康はさほど悪くなかった。ただし,他者との峻別や対立が求められる文脈において主体的に行動できる態度は自尊感情のみが関連していた。恩恵享受的自己感という形式での自尊感情があればある程度人生を肯定し積極的に生きることはできる。だが,自己を基盤とした独立した生き方を実現する方向での自己形成は自尊感情が低い場合には難しくなるようであった。
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