本研究の初年度の研究目的は、住民のコミュニティ価値を測定することであった。ここで言うコミュニティ価値とは『地域住民がコミュニティに対して求めるニーズであり、地域での実際的な生活において重視される地域特性』のことである。このコミュニティ価値を検討することにより、住民同士の相互理解が促進され、住民参加の基盤になると考える。 上記の目的を検討するために、都市-村落・社会的ネットワークの密度・社会動態など、地域特性の異なる3地域(大阪府吹田市・京都府京田辺市・沖縄県中城村)にて調査を実施した。各地域500名の有権者を層化2段抽出法によって無作為に選び出し、郵送法にて調査を行った。 調査の結果、689票(有効回収率46.9%)の回答が得られた。コミュニティ価値を測定する質問項目『あなたが地域の生活で重視していることは何でしょうか。重視するものから順にお答えください。』(自由記述)に対して、1521のコメントが得られた。得られたコメントに対してKJ法を行った結果、14グループに分類された。具体的には「交通」、「施設整備・サービス」、「人間関係」、「伝統文化」、「自然」、「景観」、「住環境」、「教育・子育て」、「安全」、「地域の発展」、「地域における諸問題」、「利便性」、「自然と利便性のバランス」、「なし」であった。このことからコミュニティ価値は、住民1人1人に応じて無制限にあるのではなく、限られた次元に収斂されることが明らかになった。またこれら14グループについて地域間比較を行ったところ、例えば中城村では「人間関係」の度数が有意に多いのに対し、吹田市では有意に少ないなど、地域(地域特性)によってコミュニティ価値のウェートが異なることも示された。 次年度の計画として、得られたカテゴリーを元に、コミュニティ価値を量的に測定できる尺度を開発し、最終的にコミュニティ価値を中心とした住民参加の意思決定モデルについて検討を行う。
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