平成23年度における本研究の目的は、前年に行った調査結果をもとに、コミュニティ価値(『地域住民がコミュニティに対して求めるニーズであり、地域での実際的な生活において重視される地域特性』)を量的に測定できるよう尺度化を試みること、さらに住民参加の意思決定モデルとして、コミュニティ価値とコミュニティに対する態度・住民参加との関連性を検討することであった。 上記の目的を達成するために、日本全国を対象としたWeb調査(全国を10ブロックに分け、各ブロックの人口比に応じて調査対象者数を決定)を実施し、最終的に651名より回答が得られた。 分析の結果、住民のコミュニティ価値は、「利便性(交通、商業施設・買物)」・「コミュニティ問題(地域の発展、地域問題の解決、教育・子育て)」・「情緒性(伝統、景観、人間関係)」・「セーフティネット(安全、医療・保健)」・「居住性(文化的な生活、公的な施設・サービス、住宅環境、自然、物価)」のクラスターに分類されることが明らかになった。また各クラスターと住民のコミュニティに対する態度や住民参加との関連を検討した結果、特に「利便性」と「情緒性」のクラスターで関連が認められた。ただし両者では関連の方向性が異なっており、利便性はコミュニティに対する態度および住民参加と負の相関、情緒性では正の相関であった。つまり、コミュニティにおいて住民が利便性を追求するほど、コミュニティに対する態度や関わりが低下するのに対し、情緒性が増すほどがコミュニティに対する態度や関わりが増すことが明らかになった。
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