研究概要 |
孤独感の高い人の情報処理のスタイルが、インターネット上の情報が持つ影響力の認知とどのように結びついているのかについて、第三者効果に注目して検討を行った。第三者効果とは、マスメディアからの情報やメッセージに対して、自分よりも他者が強い影響を受けると認知する傾向をさす(Davidson,1983)。インターネット上の情報についても第三者効果はみられるが(Lee&Tamborini,2005)、ブログやTwitterといったソーシャルメディアの第三者効果は十分に検討されていない。また、マスメディアからの情報収集は受動的であり、受け手は内容の真偽や結論の妥当性に関する批判的検討を主体的に行う必要がない。一方、ソーシャルメディアからの情報収集は能動的であり、受け手は情報の選別を主体的に行う必要がある。本研究では、他者が行う「黒か白か」という二分法の不適切さを見抜ける人が、受動的な一般他者に対するマスメディアの情報の影響力を過大評価するのに対し、能動的な意思決定を行える自分に対するソーシャルメディアの影響力を過小評価するという仮説を立て、検討を行った。インターネット上のアンケートサイトで収集された550名の回答を分析した結果、他者の誤った二分法への気づきは第三者効果を促進するが、(1)情報への受動的な接触が主となるマスメディアには他者が影響されやすいと認知する、(2)能動的な情報選択が必要とされるソーシャルメディアには自分が影響を受けにくいと認知する、という2つの異なる影響過程が存在することが明らかとなった。ただし、孤独感の高い人では、第三者効果の影響は抑制されていた。このことから、孤独感の高さが自らの信念・思考への焦点化を促進し、他者の思考への焦点化を不十分にする結果、第三者効果を弱めている可能性が示された。
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