研究課題/領域番号 |
22730484
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
増地 あゆみ 北海学園大学, 経営学部, 教授 (00322777)
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キーワード | リスク判断 / リスク情報 / 感情価 |
研究概要 |
本研究の目的は、リスク低減方策に対する組織の判断を、より安全重視の方向へ導く要因として、「リスク情報に対する感情反応(感情価)」および「リスク情報の共有方法」に着目し、これらが組織のリスク判断に及ぼす影響を明らかにすることである。初年度の平成22年度は、企業のリスク管理担当者の協力を得て、聞き取り調査を実施し、組織の安全対策に対する判断プロセスの事例、現場で起きた事故の事例についての情報を収集した。平成23年度は、平成22年度に実施した聞き取り調査で得られた医療現場の安全対策事例を題材とし、「事故情報が組織のリスク判断、安全対策の導入に対する判断に及ぼす影響」を調べる実験を実施する計画であった。 今年度は、実験課題として昨年度に作成した医療事故のシナリオに対する感情価を測定する調査を行った。被験者は大学生288名と現役の看護師・看護i教員6名であった。大学生の調査では質問紙を用いた。はじめに心理検査POMSへの回答を求めた後、医療事故の詳細を説明した文書を読んでもらい、その後、再び心理検査POMSに回答してもらった。看護師の調査では、大学生の調査と同様の質問紙調査を行った後、個別にインタビューを行った。シナリオを読む前後の気分の変化をPOMSの5因子についてみると、大学生でも看護師でも、事前に比べて事後に「不安感」と「抑うつ感」がやや高まり、「爽快感」がやや低下する結果であった。看護師を対象としたインタビューでは、医療の現場で経験するヒヤリハットや事故の事例を共有する仕組みづくりの重要性、安全意識向上の必要性が指摘された。特に、医療現場では立場などによって安全に対する意識に温度差が存在じ、それが事故防止対策の妨げになっている場合があるため、リスク情報の共有と同時に、事故防止を優先させる組織的意思決定につなげる重要性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画と比べて遅れている理由は、(1)平成23年度中に研究の遂行のために割ける時間が当初予定していた時間よりも少なかったこと、(2)昨年度の聞き取り調査で得られた医療事故に関する事例などの情報は多くが概要であったことから、具体的な事故のシナリオを作成するためには、さらなる情報収集が必要となったため、である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、本研究課題を計画に沿って進めていくため、下記の対応をとっていく。(1)研究のための時間の確保。本務の効率化を図り、まとまった時間を継続的に確保したい。この点が実現できれば、本研究課題は大きく進展すると考えている。(2)本年度は、医療現場をよく知る看護師の協力を得る機会を準備しているので、その助言を参考に、より現実的で具体的な実験課題を作成し、実験を実施していく。
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