本年度の研究では、生活実態に即した学区・元学区等の近隣生活圏を単位として分析を行うために京都市中京区住民を対象とした質問紙調査を実施した。調査回答者数は392名であった。調査項目としては、性別、年齢等のデモグラフィック項目、居住地移動の経歴、居住学区、暮らし向き、主観的幸福観、地域での生活満足度、身体的健康、地域での孤独感、地域行事への参加・近所づきあい、居住地域の近隣関係・結びつき、コミュニティ意識尺度短縮版(12項目)、中京区の街並みの評価(12項目)、町内・学区内・1時間圏内の知人・友人・親族との社会的ネットワーク、等の項目を用いた。7段階で測定した社会的ネットワークに関する尺度を除いては、尺度項目では「1.そう思わない」から「5.そう思う」までの5段階で評定を求めた。番組小学校の設置されていた中京区東部とそれ以外の西部の住民間で、地域への愛着、暮らし向き等に差があるのか検定を行った結果、伝統的な都市部である東部の方が愛着、暮らし向き、生活満足度、居住継続意図、主観的幸福感が有意に高かった。中京区での居住継続意図と地域での生活満足度に関する重回帰分析結果では、配偶者の有無が地域での生活満足度においてのみ有意であったのを除いて、愛着、身体的健康、孤独・孤立、暮らし向きの4要因が共通して有意であった。つまりコミュニティ意識の愛着が高いほど、身体的健康が高いほど、また暮らし向きがよいほど、居住継続意図と地域での生活満足度は高くなり、逆に孤独・孤立が高いほど居住継続意図と生活満足度ともに低くなっていた。
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