今年度の研究では、はじめにコミュニティ意識尺度の項目数が27項目とそのまま用いるには分量が多すぎるという問題を解決するために、12項目の短縮版の作成を試みた。分析に用いたのは、昨年度に実施した京都市中京区住民を対象とした調査データ(回答者数392名)であった。調査項目は、性別、年齢等のデモグラフィック項目、居住地移動の経歴、居住学区、暮らし向き、主観的幸福観、地域での生活満足度、身体的健康、地域での孤独感、地域行事への参加・近所づきあい、居住地域の近隣関係・結びつき、コミュニティ意識尺度短縮版(12項目)、中京区の街並みの評価(12項目)、町内・学区内・1時間圏内の知人・友人・親族との社会的ネットワーク等、であった。コミュニティ意識尺度短縮版(12項目)について検証的因子分析を行った結果、全体的に十分なモデルの適合度が得られ、27項目版の4因子構造を12項目版でも再現できていることが示された。 次に、番組小学校の設置されていた中京区東部とそれ以外の西部の住民間の比較を行った結果、伝統的な都市部である東部の方が愛着、暮らし向き、生活満足度、居住継続意図、主観的幸福感が有意に高かった。さらに本研究では、居住地移動の経験とコミュニティ意識について検討した。転居パターンごとのコミュニティ意識関連項目の平均値の比較結果から、全体的な傾向としては、定住者に比べてその他の地域からの転居者において地域からの孤独感が高く、地域行事への参加や地域への愛着が低いことが明らかとなった。
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