本研究の目的は、第三者介入による対人コミュニケーション支援の方法を提案することである。従来の研究では、対人コミュニケーションの問題を解決する方法として、「当事者のコミュニケーション能力の向上」に焦点が当てられていた。具体的には、コミュニケーション能力の実態を検討した調査や実験が行われ、能力向上を目指すトレーニング・プログラムが開発・実践されている。しかし、当事者に極度な苦手意識がある場合や実際に不得手な場合に、当事者の意識や行動を変容させると同時に、外部から第三者が効率的に介入を行うことが対応策として考えられる。そこで、本研究では会話実験を体系的に実施し、第三者介入が対人コミュニケーションに及ぼす影響を実証的に解明することで「第三者介入による対人コミュニケーション支援の効率的方略」を提案したい。 本年度はまず、対人コミュニケーション支援を行う第三者の認知メカニズムを実験的に検討した。大学生161名が会話場面を観察して質問項目に回答した。その結果、参加者はコミュニケーションを観察して、その良好性の判断に基づき、会話者間の親密性を推測していた。これは、行動観察に基づく特性推論を拡張した、対人コミュニケーションの観察に基づく対人関係特性推論と言える。また、対人コミュニケーションや親密性に関する判断と、関係カテゴリー判断には関連がみられなかった。この結果は、社会的判断のピースミール処理とカテゴリー処理に対応している可能性がある。
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