本年度は、研究1として「事前情報が対人コミュニケーション支援を行う第三者の認知に及ぼす影響」を検討した。具体的には、対人コミュニケーションを行う当事者の関係性に関する事前情報の有無(会話者は友人である=ラベル有条件、ラベル無条件)によって第三者の認知(コミュニケーションの良好性、会話者間の親密性)に影響がみられるかを調べた。ラベル有条件は31名(男性14名、女性17名)、ラベル無条件は43名(男性12名、女性31名)が参加した。2者間会話場面を刺激として呈示し、参加者は会話者がコミュニケーションをどの程度ポジティブに認知するのかと、親密さの程度を評定した。全体的な結果として、ラベル無条件よりラベル有条件のほうが、第三者はコミュニケーションをネガティブに認知し、会話者間の親密性を低く推測していた。この結果は、友人同士の会話と認識しながら会話を観察すると、第三者は割引原理を適用する傾向があることを示唆している。 また、研究2として「第三者の介入が当事者の対人コミュニケーションに及ぼす影響」を会話実験から検討した。具体的には、未知関係の2者で会話する「統制群」と、未知関係2者の会話に1方の友人が介入する「実験群」を設けて、親密話題と討論話題について会話するよう求め、自己呈示動機・対人コミュニケーション認知・感情状態・会話内容の記憶に関する質問項目に回答してもらった。その結果、親密話題・討論話題ともに統制群に比べて実験群はリラックスの程度が低下していた。親密話題において、統制群に比べて実験群はコミュニケーションをポジティブに認知する程度が低下した。また討論話題で、統制群に比べて実験群は親しみやすさの自己呈示動機が低くなっていた。これらの知見は、第三者介入が当事者のコミュニケーションを阻害する危険生を示唆している。今後、当事者支援につながる第三者介入の方法を更に検討する必要がある。
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