本年度は集団討議実験を実施し,Discussant-roles(討議者役割)に対するチームメンバーの取得傾向とチーム・パフォーマンスの関係について検討した。 集団討議実験では,グループ旅行のプランニング課題を課した。この課題は,1泊2日のグループ旅行を5人で話し合い,旅程表にプランを記入するというものであった。 実験後,討議映像を元に,実験協力者が討議中の発話行動と役割取得行動をコーディングした。また,討議の質についても異なる実験協力者が評価した。これらのデータを用いて,討議者役割の取得プロセスおよび課題解決のパフォーマンスへの影響について解明した。その際,チーム役割に関する異なるアプローチを持つ諸先行研究の知見から帰納的に導いたチーム役割の多層モデル(役割レパートリ-役職-職務-行動)に従い,層間の関係性を順次検証した。 分析の結果,メンバーの役割取得については,メンバーを効果的な課題解決に向かわせる集団圧力がはたらいた討議集団では,メンバーは貢献的な役割取得パターンを斉一的に示すのに対し,そのような圧力の弱い討議集団では,メンバーは自らの役割レパートリに応じた役職・職務を取得する傾向にあることが明らかになった。 チーム・パフォーマンスに対しては,貢献的な役割を斉一的に取得したチームほど,高いパフォーマンスを示すことが分かった。課題集団では,集団の性質上,非貢献的な役割を斉一的に取得することはない。そのため,役割取得の斉一性とチーム・パフォーマンスが,正の相関関係を示したと考えられる。 「課題解決に向けた集団圧力を高めることで,貢献的な役割の斉一的な取得が促される。それにより,チームのパフォーマンスは向上する」。この集団力学的メカニズムは,チーム・マネージメントの実践に活かすことができるであろう。
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