研究概要 |
同一の測定ツールに関する複数の信頼性研究の結果を統合するメタ分析(Reliability Generalization)を階層的線形モデル(HLM)の枠組みで行う際に,正規性の仮定からの逸脱に対処するための方法について検討を行った。前年度までの成果によって確立された人工データの発生によるえミュレーション方法に基づき,信頼性研究で報告されるα係数をHLMの枠組みで統合する際に,どのような変換を行うことでより母数の再現性が高くなるかを検討した。変換の方法として,(1)無変換(α係数そのまま),(2)フィッシャーのZ変換,(3)フィッシャーのZ変換の平方根,(4)Miyazaki(2007)の対数を用いた変換,(5)Rodriguez & Maeda (2006)の立方根を用いた変換,(6)上記(5)の立方根を用いた変換をさらに修正した変換の6種類を取り上げた。研究間での信頼性係数(α係数)の真値に関する母集団分布として,一様分布と正規分布の2種類を想定し,サンプルサイズ等の条件を変化させて人工データによるシミュレーションを行った。その結果,同一母集団抽出されるα係数の標本分布に基づいた,対数を用いた変換および立方根を用いた変換がいずれの条件でも概ね母数の再現性の点でよいことが明らかになった。この結果によって,従来,個々の研究で独立に行われていたテスト等の測定ツールに関する信頼性の検討を,より大局的な視点から統合することができ,より信頼性を高めるための測定の条件などの検討を行うための方法を確立する基盤となると考えることができる。
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