研究概要 |
新しい学習指導要領においては,道徳教育について「すべての学校段階において一貫して取り組むべきもの」であることが強調されるようになった。しかしながら,とりわけ保育所・幼稚園と小学校との接続に関しては,環境を通して規範意識の芽生えを培う「幼児教育」(保育)と道徳の時間を「要」として道徳的価値観の形成を図る「小学校教育」との間に指導形態の相違があることもあり,異校種間で共通理解を図ることは容易でない現状にあるものと推察される。こうした状況の中,保育者・教師間の道徳指導観の相違や共通性の実態を押さえるとともに,そうした指導観の形成過程を養成段階も含めて検討することは,極めて重要な課題であると考えられる。そこで本研究では,これらの問題について,保育者・教師及び養成課程の学生の率直な意見(自由記述のテキストデータ)をもとに,テキストマイニングの手法を用いて分析・検討を行うこととした。平成22年度に引き続き実施・発表した調査結果から,保育者・教師の指導のあり方について,1。小学校教諭が道徳教育の目標や指導内容そのものを重視するのに対して,保育者は子どもたちの思いや気持ちに寄り添うことを重視する傾向にあること,2.こうした相違は養成段階から認められ,特に実習経験などによって顕著となる可能性があること,3.養成課程の学生は,現職の保育者や教員と比較して直接的な指導(叱る,褒めるなど)を重視する傾向にあることなどが確認された。さらに,道徳性の芽生えを培う上で親と保育者・教師のそれぞれが果たすべき役割についても,4.幼児教育・保育関係者と小学校教育関係者との間で,さらには,5.学生と現職者との間で,認識の相違が認められる可能性が示唆された。
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