研究概要 |
平成22年度は,他者とのやりとりによる知の構成過程を明らかにするために,留守家庭に在籍する小学校3年生を対象に実験を行った。また,現在,この実験の論文化を行っているところである。 具体的な実験内容は,実験者が実験協力児とやりとりする際に,実験協力児に対して,協応的に振る舞う条件,表面的に振る舞う条件の2条件を設けて,やりとり後の子どもの知識獲得の程度の違いを検討した。その結果,子どもに対して,協応的に振る舞う方が,子どもの知識獲得を速やかに導くという結果を得た。このことは,やりとりを楽しめるような雰囲気をつくっていかなければ,やりとりをいくら行ったとしても,相手の言葉の真意等を受けとることができず,結果的に,学習が阻害されるということを示している。具体的に言えば,親子のやりとりにおいても,やりとりの中で,子どもとの良好な関係性を築いていかなければ,子どもは,親の言った言葉を素直に受け入れられない(受け入れる態度にならない)ため,親が意図したように知識獲得を推し進められないのである。 こういった結果を踏まえると,この研究によって,子どもの知識構築の仕方の変化のみに注意を払っていた従来の発達観に対し,情報提供する側とそれを受けとる(子ども)側という2者の関係性の変化という新たな発達観の提供を行えるようになると考えられる。詳細に言えば,従来示されていた子どもの相手の意見を受け容れる過程を示しただけにすぎない知識獲得過程において,子ども側が相手の意見を受け容れる態勢を作っていくことがまずは重要になってくるという側面を付与できるようになったのである。
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