1.大学授業を通じた大学生の世界観の変容に関するデータ分析を、学生の発達観の変化を中心に分析した。「書く」という作業そのものは地味なものであるためか、映像資料を観るような体験のほうが学生の認識へのインパクトは大きい。その一方で、そのようなインパクトのある体験だけでは学生の認識の変化が不十分であったり、反発を感じさせるだけになりがちであり、「書く」作業をどのように取り入れるかが重要であることが示唆された。 2.アカデミックライティング実践も含めた大学生の学修を生涯発達プロセスに位置付けて理解する理論的な枠組みを構築するため、「可逆操作の高次化における階層ー段階理論」に基づく青年期の位置づけの検討を行った。特に大学入学前後に学生が体験する「学び方の違い」が彼らの世界観に影響する可能性等について検討した上で、大学生期を通じて達成される発達の飛躍的移行と研究力(アカデミックライティング力も含む)の考察を行った。 3.「2」で検討したことをとりまとめて論文として公表したほか、「1」と「2」の両方を視野に入れた論文を執筆して投稿した。また本研究の成果を生かした招待講演を2回行った。 4.本研究は、研究計画の段階で「大学生の全人的発達」とアカデミックライティングが並置されているようなところがあり(概念整理が十分とは言い切れず)、それが研究成果が断片的になりがちな背景としてあった。その反省も踏まえつつ、また本研究の成果を生かしつつ、青年の発達の飛躍的移行を下支えするプロセスとしての知識生産的学習(大学学習)との遭遇プロセスを明らかにしようとする新たな研究計画を立案した。
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