平成22年度は、感謝の心理的機能(感謝を感じることがどのようなことをもたらすか)を明らかにすることを目的に研究を進めた。 2010年12月から2011年1.月にかけて、千葉県の私立女子大学生217名に質問紙調査を実施し、感謝の探索的検討を行った。父親、母親、友だち、恋人(配偶者)、人間を超えた自然などに対する感謝を感じている程度とその理由、さらに比喩生成法を用いた感謝の心理的意味、感謝の対概念について尋ねた。 分析の結果、女子大学生の多くが、父親や母親、友だちなど広い対象に感謝を感じていることが示された。また、感謝の心理的意味として、「生きる喜び」「日常生活になくてはならないもの」「自然と湧いてくるもの」「つながり」「思いやり」「相手も喜ぶもの」「恩返し」「礼儀」「成長の糧」などが見出された。感謝の対概念としては、「無関心」「うらみ」「嫌悪」「悪意」「裏切り」「迷惑」「仇」「無礼」「自己中心」などが見出された。「謝罪」という記述は、感謝の心理的意味と対概念のいずれにおいてもみられた。 また、感謝に関連する先行研究の整理から、「規範」「交換」「配慮」「存在」という感謝の4領域が示唆されている。この4領域の中でも、青年期には自らの存在に迷い悩むことが多くみられることから、「存在への感謝」(自分が産まれ生きていることに感謝を感じること)が重要になると推察された。 平成22年度に実施した研究の成果は、分析結果をまとめ、現在、学会発表や論文投稿の準備を進めている。
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