研究課題/領域番号 |
22730519
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
池田 幸恭 和洋女子大学, 人間・社会学系, 助教 (70523041)
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キーワード | 感謝 / 生き方態度 / 心理学 / 青年期 / 親子関係 / 友人関係 / 恋愛関係 |
研究概要 |
平成23年度は、感謝の心理的機能という枠組みを広げ、「感謝はどのような意味を有するのか」という感謝の心理的意味を明らかにすることを目的に研究を進めた。 はじめに、平成22年12月から平成23年1月にかけて千葉県の私立女子大学生217名に実施した質問紙調査結果について再分析を行った。その結果、女子大学生の多くは父親や母親、友だちなど広い対象に感謝を感じていること、さらに感謝の心理的意味は「感情状態」、「他者への感情」、「感謝の特徴」、「引き起こされる行動」、「関係への影響」というカテゴリーから理解できることが示唆された。また、感謝の心理意味では「あたたかさ」が、感謝の対概念としては「無関心」が最も記述数が多かった。 そして、平成24年1月に茨城県の大学生122名に質問紙調査を実施し、「今の自分があることに感謝を感じること」という存在への感謝、および生き方態度に感謝がもたらした変化について探索的に検討した。 上記の大学生への調査結果および感謝に関する先行研究の整理から、感謝の心理的意味を規定する要因として、「根源的受動性の受容」(対自的要因)、「他者からの承認の感覚」(対他的要因)、「恩恵のかけがえのなさ」(関係的要因)が見出された。 本研究をとおして、実際に感謝がどのような意味を有するものとして青年に実感されているかが示されたことは有意義であると考える。さらに、心理学のみならず、教育学、社会学、哲学、倫理学、宗教学など諸領域の知見を統合して、感謝の心理的意味を規定する要因を見出した成果も重要であろう。 今後は、平成23年度の研究成果に基づいて感謝を規定する心理的要因を尋ねる項目を作成し、青年期の生き方態度に感謝がもたらす変化について明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画した質問紙調査の実施が遅延しているためである。感謝を分析する枠組みの検討を重視し、多角的に探索的調査を行った結果、計画に遅延がみられている。その一方で、感謝の概念を丁寧に分析することができ、感謝の心理的意味を規定する要因が網羅的に見出されたことは大きな成果であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
感謝と生き方態度との関係を生涯発達的な視点から検討するために、10代から60代までにインターネット調査を実施する。 また、当初の研究計画では、「感謝の心理的機能」を尋ねる項目を作成する予定であったが、青年の生き方態度とより関係が深いと考えられた「感謝の心理的意味を規定する要因」を尋ねる項目を作成し分析する。 さらに、横断的研究では検討できない"変化"を検討するための短期縦断調査について、調査協力者の人数をしぼり面接調査とあわせて実施することも計画している。
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