平成24年度は、感謝を感じる対象および感謝を規定する心理的要因と、与えることの喜び、人生満足度という2種類の生き方態度との関係を明らかにすることを目的に研究を進めた。関東圏在住の10代から60代までの計1800名に、2012年9月にウェブ調査を実施し、20代から60代までの計1141名に2013年2月にウェブ調査を継続して実施した。継続調査では、初回調査と同一の感謝を感じる対象20項目、与えることの喜び尺度、人生に対する満足度尺度(角野,1994)に加え、感謝を規定する心理的要因を尋ねる24項目に回答を求めた。 本研究の結果、主に次の3点が示された。第1に、発達に伴い具体的な人物だけでなく、抽象的な対象への感謝をより強く感じるようになっていた。第2に、20代では家族関係における感謝を中心に与えることの喜び、人生満足度との負の関連もみられたが、30代以降では負の関連はみられなかった。第3に、感謝を規定する心理的要因として、20代では「他者による配慮」「支えの充足」「独力志向」「他者の助力は当たりまえでないという実感」という4因子が見出されたが、30代、40代では「恩恵のかけがえのなさ」という1因子にまとまり、50代では「他者とのつながりの自覚」「他者へかけてきた負担」「他者からの承認」という3因子に分化し、60代では再び「恩恵のかけがえのなさ」という1因子にまとまった。20代の「他者の助力は当たりまえでないという実感」および50代の「他者へかけてきた負担」は、与えることの喜びと正の関連を示したが、人生満足度とは負の関連を示した。 青年期では生き方態度に感謝が直接的に変化をもたらすことは成人期以降と比較すると少ないが、むしろ素直に感謝できないという感覚が自らの生き方を問い直すことにつながり、そこで生じた視点の変化に伴い生き方態度も変化していくことが示唆された成果は重要である。
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