研究概要 |
本研究は自己主張性の個人差を規定する要因として,自己主張行動がもたらす効果をどのように予測しているかという点に注目し,これらを発達的観点も含めて検討するものである。そのために,状況の違いが自己主張行動の効果予測に及ぼす影響の検討(調査1),自己主張行動の効果予測が自己主張性の個人差に及ぼす影響の検討(調査2),自己主張行動の効果予測の発達的変化の検討(調査3)という3つの調査を計画した。平成22年度は主に調査1を実施し,これを日本心理学会第74回大会で発表した。調査1では大学生82名を対象に,大学生活に関する3つのシナリオ(学業,アルバイト,サークル)とともに,5段階の自己主張パターン(1「全く自分の意見を伝えない」,2「間接的に自分の意見が伝わるようにする」,3「自分の意見を伝えた上で,相手の考えを聞く」,4「相手の考えより自分の意見が優れていると説得する」,5「自分の意見のみを強く主張する」)を提示し,それぞれについて,道具的効果(よい成績をおさめることができる,より高い給与を得ることができる)と社会的効果(相手と良好な関係を保つことができる)について,「非常にそう思う」から「全くそう思わない」の7段階で予測させた。その結果,いずれのシナリオにおいても道具的効果の予測は中程度の強さの自己主張を最も効果的と予測する逆U字型,社会的効果の予測は弱い自己主張を最も効果的と予測するなだらかな右下がりとなることがわかった。つまり強い自己主張が効果的でないと予測されるという傾向が状況に関わらず顕著に見られた。この調査1の結果をふまえて,現在調査2を開始しており,今後も継続してデータ収集を行う予定である。
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