研究概要 |
本研究の目的は,次の三点である。第一に,国内外における幼児期の環境教育の実態について調査を実施,分析し,その現状と課題を明らかにする。第二に,環境教育が幼児の心身の発達(遊び,社会性,身体的能力,健康,心象風景)に与える影響を心理学的な観点から多元的に検討する。第三に,以上の調査を通じて,幼児期における環境教育の意義を明確化し,その具体的方法についてエビデンスに基づいた提案を行う。 今年度は,本研究の第二の目的のための予備調査として,さまざまな保育環境に置かれている年長児を対象にS-HTP法を施行して出来るだけ多くの描画を収集し,環境教育の効果測定の一基準として,この検査法が適しているかどうか検討することを員的とした。S-HTP法は描画検査法の一種であり,本研究では,子どもの心象風景を探る手法として,これを採用することを検討している。三上(1995)は,S-HTP法が,年長児から施行可能であることを報告しているが,幼児を対象にS-HTP法を施行した研究はまだ少なく,まして環境教育の効果測定という観点からS-HTP法が施行された例は皆無である。 そこで,今年度は,幼児期の子どもの心身の発達に対する自然を活かした環境教育の効果測定の手法の一つとしてS-HTP法を用いた描画検査法の有効性について検討するため,ある保育園の年長児22名に対し,2か月に1度のペースで5回にわたり,家・木・人の絵を描いてもらった。その結果,表現上は拙いものの,子どもたちは,自分たちの経験を絵の中に表現することが可能であることが明らかとなった。 以上のことから,来年度以降に実施する調査では,心象風景を探る手段として,S-HTP法を採用することとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の保育園でS-HTP法のデータを収集することは叶わなかったが,一つの園の年長児らを年間を通してじっくり観察し,S-HTP法の補足となる情報を多く得ることができた。また,S-HTP法のデータの収集は行わなかったが,昨年度の大規模調査に協力していただいた園から,許可をいただけた20の園の訪問調査を実施することもできた。これは,昨年度の調査の質的データとして併せて論文にしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,幼児に対する環境教育の影響を調べるため,環境教育を実施している園あるいは一般的な園に所属する幼児らを,社会姓,遊びの様子,健康状態,身体能力,心象風景の5つの観点で比較し,環境教育が幼児の心身の発達に与える影響を多元的に検討する。年度の初めに,複数の保育園に調査の協力依頼を行う予定であるから,研究の性格上,どれだけの園に協力していただけるか,多少不安がある。
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