研究概要 |
本研究の目的は、アタッチメントタイプの予測因として表象レベルから行動レベルまでを含む養育者の複数の特徴を同時に測定し、それらの相互関連性を分析したうえで、子どものアタッチメントタイプへの影響を問うことである。生後3年間の縦断研究の遂行にあたり,本年度は生後1年目のデータとして,母親側の特徴を捉える調査を実施した。 研究協力者として生後6ヵ月の乳児と母親を募り、現在までに十数組について協力を得た。母子を大学内のプレイルームに招き,以下の実験,観察,面接,ならびに質問紙調査を実施した。母親の認知的特徴として、(1)「子どもの全般的表象」をMeins et aL.(1998)によるmind-mindednessインタビューによりとらえた。次に、(2)「乳児への心的帰属のしやすさ」として、篠原(2006)のmind・mindedness測定実験を実施し、乳児に対する心の存在の想定のしやすさを捉えた。さらに,(3)「乳児の内的状態の適切な読みとり」にみられる母親の特徴を、Insightfulnessインタビューにより測定した。続いて、母親が示す子どもへの具体的な行動に表れる特徴の測定を行った。具体的には,(4)行動全般の適切さ(Sensitivity)、(5)乳児の内的状態に関する発話の適切さ、(6)母親の行動全般のタイミングの適切性(Emotional Availability)の測定を行うために,母子の自由遊び場面の観察を実施した。得られたデータについて,順次,得点化を行っている。 母親の認知面,行動面での特徴を同時に測定する試みは稀少であり,来年度以降に調査予定である子どものアタッチメント発達の予測因として分析に組み込むための,基礎的なデータが得られたと考える。なお,今後も生後6ヵ月時のデータ収集を行い,サンプル数を増やしていく計画である。
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