研究課題
本研究は家族関係におけるライフヒストリーが現在の家族関係やストレスとどのように関連するかについての探索的研究である。H22年度は質問紙の完成を目指していたが、実際には質問紙(家族関係ヒストリーグラフ(FRHG))の作成とともに調査を実施することができた。調査の対象は専門学校生・大学生計108名(男性34名・女性74名)。家族関係ヒストリーグラフ(FRHG)を作成し、使用した。子-父-母という三者関係について、結びつき、勢力、ストレスについて測定した。現在、女子が感じている家族ストレスに関しては現在の父子結びつきが負の関連を示していた。一方で、16歳から18歳時点での父親の勢力は正の関連を示していた。子どもが年齢を重ねるにつれて母親との結びつきの弱まりや母親の勢力の低下と、子どもの現在の家族ストレスには関連が見られないものの、経年につれて父親との間の結びつきが弱まることは、子どもが認知する父親の勢力の低減に関連していることが示された。また、青年期後期の女子が感じる家族ストレスは、現在の家族関係ないし直前の時期の父子関係との間に強い関連が示された。これらの結果から、家族ストレスの変容をねらう場合、現在の家族関係にまずは焦点を当てた方法(家族療法)を用いることが重要と考えられた。現在、家族関係ヒストリーグラフ(FRHG)は信頼性と妥当性に関する研究を進めているところである。H23年度には、学会誌(印刷中)において、信頼性と妥当性の検討を含め、調査対象者を増加したうえでの研究成果の報告が行われる予定である。
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Interactional Mind III (2010)
巻: 3 ページ: 92-98