研究課題
本研究は家族関係におけるライフヒストリーが現在の家族関係やストレスにどのように関連するかについての探索的研究である。家族の累積的な関係を測定するために、H22年度に家族関係ヒストリーグラフ(FRHG)を作成したが、信頼性および妥当性の検討が行われないままであった。そこでH23年度において、家族関係ヒストリーグラフ(FRHG)の信頼性と妥当性を検討し、International Journal of Brief Therapy & Family Science 誌(vol.1, No.2)にて報告した。家族関係ヒストリーグラフ(FRHG)で測定された累積的な家族関係は、家族関係の横断的データであるNFRJのデータとの相関を見たとき、父子関係で.92、母子関係で.76という高い相関を示した。これはFRHGの妥当性にかかわる検討である。また、1カ月および4か月という反復測定による信頼性の検討では、年齢により相関の幅があるものの中学生以上の年齢では親子の結びつきにおいて概ね信頼性が認められるようであった。また、現在の語りに基づく家族関係の移行プロセスを測定し、家族関係の安定性について検討した。その結果、子どもが12歳から14歳、15歳から17歳の時期に、家族関係の結びつきや勢力に変化が起き、家族関係が不安定になることが示された。さらに、性差が見られた。女子の場合、青年期以降も父親との関係に比べ、母親との強い結びつきが維持されていた。一方で、男子の場合、青年期初期から親との結びつきが低下し、それぞれの親との結びつきは同程度に移行した。本研究では、家族関係を査定する方法としての家族関係ヒストリーグラフ(FRHG)の利用とそのデータの分析手法を確認することができた。H24年度では、家族療法に来談した人々(臨床群)の家族関係を家族関係ヒストリーグラフ(FRHG)を用いて査定し、問題の性質と家族関係の関連性についての検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
実際にデータを取り、分析するに至った。一方で、不登校・ひきこもりおよびその他の問題に関するデータはそろいつつあるが、分析作業には至っていない。H24年度では早急に分析作業を進めていきたい。
現在、臨床群のデータを増加し、その分析を行うことで、非臨床群と臨床群での比較検討を課題としている。今のところ順調にデータがそろいつつあるので、分析および比較検討作業に入っていきたい。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
International Journal of Brief Therapy and Family Science
巻: 1 ページ: 104-110
巻: 1 ページ: 111-116