研究概要 |
本研究は児童養護施設における家族支援の実態を調査すること及び心理職による家族支援の可能性の検討を目的として実施された。まず全国579か所(2010年6月現在)の児童養護施設(以下,施設と略記)に勤務する心理療法担当職員など(以下,心理職と略記),'および,管理職・ファミリーソーシャルワーカーなど家族支援を実際に担当している心理職以外の職員(以下,FSW等と略記)を対象に質問紙調査を行い、実態調査とした。施設における心理職による家族支援の実態を直接的支援(各種心理面接など)と間接的支援(アセスメントやコンサルテーションなど)に分けて尋ねた結果,家族への直接的支援を行っているものは1割程度にとどまり,6割以上は間接的にも家族支援に関わっていないことがわかった。一方,「心理職は家族支援に関わった方がよい」には約85%が同意しており,心理職は家族支援実践に関わることはできていないが強い関心を抱いていることがわかった。またFSW等家族支援担当者への調査では,約75%が心理職の関与に期待していることも分かった。期待の内容としては,「心理職による多様な視点や理解,支援の提供の可能性」を求める声が最も多かった。次いで心理職に対して行われたインタビューからは、施設における家族支援に心理職が関わるパターンには,(1)家族合同面接,親面接など直接的な家族支援を行う「直接援助型」,(2)直接は家族と会わないがFSW等と一緒に家族についての理解・アセスメントを話したり,関係者会議に参加したりして,支援の可能性を検討する「間接援助型」,(3)子どもの内的な家族イメージを肯定的に育んだり,子どもが語るや家族像や面会・外泊等の際に子どもが感じたことや経験したことを丁寧に聞くといった「子ども援助重視型」,という3つがあることが推察され、施設を取り巻く状況と心理職の素質を鑑みながら、施設の心理職それぞれが家族支援に関わることは可能であることがわかった。
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