近年の発達障害支援の動向として、早期支援、高等教育における学修支援、及び就労支援が注目されている。このことは、発達障害支援が学校教育における支援に留まることなく、発達過程において連続的な支援に拡がりつつあることを示している。学校教育から就労への移行においては環境に大きな質的変化が生じる。その移行支援を円滑に進めるためには、1.就労支援において特別支援教育の支援資産を継承・活用すること、2.就労において問題化することを、特別支援教育において予防的に支援することの2つが必要になる。発達障害児の特別支援教育について、個別支援計画の作成においては、WISCやWAIS、K-ABC、DN-CASなどの知能検査(認知アセスメント)が中心的な役割を果たしている。これらの検査は複数の下位検査から構成され、その下位検査得点間のプロフィールを分析する手続きが既に開発されており、アセスメントや支援において積極的に活用されてきた。これらの検査やそのプロフィール分析を共通のものとして、特別支援教育と就労支援を関連づけることが、円滑な就労移行支援や支援の連携に繋がることが期待される。神経心理学では、反応時間(反応潜時)が神経機能の成熟度や損傷度の第一の指標であるとされ、これはWISCやWAISの「処理速度」群指数に相当する。WISCやWAISの「符号」及び「絵面配列」下位検査は、就労の良否を予測することが指摘されていた。また「理解」下位検査は、対人葛藤の解決力をみることができるが、言語能力の高い者ではこの下位検査に正答しても現実場面とは異なる場合がある。自閉症児・者の中で「積木模様」や「組合せ」下位検査を含め「知覚統合」群指数が高い場合は、言語指示による作業内容の理解が困難であっても、視覚パターンの呈示によりそれが可能となる。こうした知見を体系化し、教育的支援と就労支援を関連づけることが次の課題である。
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