研究概要 |
本研究の目的は,1)精神病への認知行動療法の客観的なフィデリティ(忠実性)測定法の開発.2)フィデリティ測定法を利用してた日本における認知行動療法フィデリティの実態調査,3)認知行動療法研修プログラムの効果評価を行い,認知行動療法において「何が」「どのように」精神病の回復に寄与しているのかを明らかにすることである. 本研究では,日本語版CTS-Psyを開発し,以下の3点を明らかにする. 1)精神科臨床に携わる医師・臨床心理士・コメディカルスタッフに対して,日本版CTS-Psyを施行し,現状での日本の精神科臨床におけるCBTpフィデリティを測定する.現状の日本の精神科臨床へCBTpを導入するために,セラピストが強化すべき点を明らかにする. 2)1)の結果に基づいてCBTp研修プログラムを作成し,研修ワークショップを実施したうえで研修プログラムの効果を評価する .3)CBTpフィデリティの改善が,実際に精神病を持つ患者の治療アウトカムの改善につながっていることを明らかにする. 本年度は,研究計画の遂行に向けて,以下を実施した. ・海外のエキスパート(Paul French)による精神病への認知行動療法ワークショップを集中的に実施した. ・海外のエキスパートによる精神病への認知行動療法ケーススーパービジョンを実施し,フィデリティについて確認した. また,インターネット動画通信を利用した継続的なスーパービジョン体制について協力を依頼した. ・精神病への認知行動療法フィデリティ尺度(CTS-PSY)日本語版を使用し,面接録音データを基にパイロット評価を行った. ・精神病への認知行動療法の施行者を育成し,東京大学医学部附属病院にて継続的に施行する体制を整備した. 以上について,精神保健予防学会,統合失調症学会で発表し,雑誌論文に成果を公表した.今後は,平成24年度より,組織的に面接の録音データを収集し,ワークショップ・スーパービジョンを継続しつつ,フィデリティ評価ツールを改訂する予定である.
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