研究期間最終年度にあたる本年度は、問題行動及び学級の荒れを抑止する教師の関わりを明らかにすることを目的に、公立小学校3校22学級の5年生・6年生、516名および公立中学校2校33学級1~3年生、866名を対象に質問紙調査を行った。 まず個人の問題行動を抑止する教師の関わりとして、小学生・中学生に分けて分析を行った。その結果、小学生では、教師の生徒への関わり20項目のうち、問題行動を抑止する効果(相関係数±0.30以上)を特に示していたのは、「生徒の話や意見をよく聞いてくれる」と「アドバイスをたくさんしてくれる」であった。それに対して、中学生では「生徒の話や意見をよく聞いてくれる」に加え、「生徒のケガや命の安全に気を配ってくれる」や「自分の間違いを認める」といった項目が問題行動を抑止する効果を示していた。 次に学級の荒れといった集団の問題を抑止する教師の関わりを検討するために、困難学級と通常学級で、教師の関わりについて比較した。その結果、小学生では、教師の生徒への関わり20項目のうち、学級の荒れを抑止する効果(相関係数±0.30以上)を特に示していたのは、「生徒の将来について熱心に考えてくれる」、「積極的に学校を良くしようとしてくれている」、「授業時間以外でも勉強を熱心に教えてくれる」、「アドバイスをたくさんしてくれる」、「生徒の話や意見をよく聞いてくれる」であり、多数の項目が荒れを抑止する効果を持っていることが分かった。それに対して、中学生では、教師の関わり20項目のうち、いずれも学級の荒れに対しては特に強い関連性は見いだされなかった。つまり、中学生においては、教師の関わり以外の要因が問題行動の促進/抑止には関連していると考えられる。
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