【目的】大うつ病性障害の精神療法は認知療法が一般的である。しかし、近年増加している非定型の特徴を伴う大うつ性障害は、うつ病の特徴と共に対人関係の拒絶への敏感さがあるため治療中断を起こしやすい。近年、治療場面に対する悲観的・否定的な認知を取り扱う技法が生まれ、機能分析療法(Kolenberg、1991)として注目を集め、機能分析療法による強化認知療法(FECT)として発展している。そこで、(1)FECTと通常の認知療法(Standard CT)の有効性の比較、(2)FECTとStandard CTの治療効果に影響を与える要因の探索の2点の検証を行う。【対象と方法】18歳~65歳の患者でDSM-IVの大うつ病性障害および、非定型の特徴を伴う大うつ病性障害の診断基準を満たす症例を対象とする。それらの症例に対し、治療前後でMontgomery Asberg Depressions Scale、Hamilton's Rating Scale for Depression、Beck Depression Scale、Social Avoidance Distress Scaleを施行する。【平成22年度研究成果】平成22年度9月よりうつ病の認知療法外来を開設し、Standard CTの適用を開始した。平成23年4月現在、10症例が研究にエントリーし、その内2例が非定型の特徴を伴う大うつ病性障害であった。エントリーした症例の内、Standard CTが終了した症例は3例である。非定型の特徴を伴う大うつ病性障害の症例に対するStandard CTについて、第107回日本精神神経学会学術総会にて症例報告を行う予定である。今後も継続的に患者のリクルートを行い、Standard CTの実施及びFECTの実施を行い、データの解析を進めていく。
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