本研究では、大うつ病性障害(MDD)の認知行動療法(CBT)において、対人過敏性を含めた治療場面に介入を加えた群(治療場面介入群)と、通常のCBT介入群(通常介入群)との治療効果の比較検討(目的1)と、対人過敏性の重症度が、抑うつ症状の重症度や改善度にどのような影響を与えているのかの検討(目的2)を行った。結果、通常介入群と治療場面介入群共に、抑うつ症状は有意に改善していたが、介入間で有意差は認められなかった。また、治療前後で対人過敏性の値が改善した群(改善群)と変化しなかった群(不変群)を比較したところ、両群共に抑うつ症状は有意に改善していたが、不変群は、客観的評価において、抑うつ症状がより重度と評価されていた。今回の結果では、抑うつ症状の改善と共に対人過敏性が改善する患者とそうでない患者が存在し、抑うつ症状による対人過敏性とパーソナリティ傾向による対人過敏性の差であった可能性が考察された。しかし、どちらの場合にもCBTと薬物療法の併用は抑うつ症状の改善に対して効果的であった。
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