研究概要 |
本研究の目的は,児童の不安障害における家族を対象とした認知行動療法(CBT)を開発し,その有効性を検討することであった。本年度は,同志社大学研究倫理委員会の「人を対象とする研究計画等審査」の承認を受け研究を開始した。まず,先行研究と海外のプログラムを参照しながら,本邦の児童を対象としたCBTプログラム(いっちゃが教室)の開発を行った。その結果,全10回の子どもと親に対するCBTプログラムが開発された。 その後,同志社大学心理臨床センターにおいて実践研究に着手した。対象者の募集はコミュニティ誌等を通じて行われた。問い合わせのあった家族について,電話による簡単なスクリーニングを行い,不安の問題を抱えている可能性のある児童については事前面接に参加してもらった。事前面接では,(1)プログラムで行う内容,期待される効果等を親子に説明し,書面によるインフォームドコンセント,(2)半構造化面接の実施,(3)質問紙調査の実施が含まれた。包含基準と除外基準に準じて15名の参加が認められた。 参加が確定した対象者について集団CBTプログラムを行った。プログラムは週に1度のペースで全10回開催された。 全ての親は児童のプログラムを見学するとともに,全4回の親セッションにも参加が求められた。プログラムのリーダーは著者が努め,コリーダーとして共同研究者である心理臨床センター相談員も参加した。プログラムはマニュアルに沿って実施され,全てのセッションが録画にて記録された。最終的に12名が10回のプログラムに参加した。 プログラム終了時点で,完遂者の33.33%が主たる不安障害の診断から外れた。また,3ヶ月時点では66.67%が主診断から外れるとともに,33.33%は全ての不安障害の診断から外れることが明らかになった。親評定による子どもの不安障害の症状尺度,及び子どもの自己報告による抑うつ尺度については,統計的に有意な治療効果がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度にすでに,家族を対象としたCBTプログラムの開発を行い,実践研究を遂行している。フォローアップデータをすでに収集済みで,あとは結果の分析,成果の発表のみが残されている。
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