児童青年(主として7~15歳)の精神障害の中でも,不安障害は最も有病率の高い問題の1つであるとされ,近年注目が集まるようになってきた。実証に基づく心理療法の基準において,児童青年の不安障害に対して有効性が実証されているのは認知行動療法(CBT)であるが,先行研究においては,親を含めたCBTの有効性については一貫した結果が得られていない。そこで,本研究では,子ども本人に対するCBTだけではなく,親への介入プログラムを組み合わせて実施する親子認知行動療法(Parent-Child Cognitive Behavior Therapy: CBT-PC)を開発し,その効果について検討することを目的とした。 対象者の募集手続きは,地域のコミュニティ誌を通じて行われた。その結果,小学生12名(男子4名,女子8名;平均9.58 ±1.11歳)を対象とした。親子認知行動療法(以下,CBT-PCプログラム)は,先行研究(石川ら,2008)を参考に作成された。プログラム開始時点,終了時点,3ヶ月フォローアップ時点において,半構造化面接,自己評定と親評定の尺度によるアセスメントが実施された。 本研究の結果,CBT-PCを完遂したもののうち,プログラム終結時点ではおよそ3分の1の子どもが主たる不安障害の基準から外れ,3ヶ月時点では半分以上の子どもが主たる不安の問題を克服していることが明らかとされた。また,半構造化面接の重症度評定において有意な低減がみられるとともに,3ヶ月時点では,参加者の平均で不安障害に当てはまる水準を下回ることが明らかにされた。欧米諸国と比して児童青年に対するCBTが普及しているとは言いがたい我が国の現状を踏まえると,本研究の成果は一定の臨床的有用性があるものと考えられる。
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