本年度は、以下の3点について調査研究を実施した。 1.発達障害児の母親への臨床心理学的援助の現状 近年、発達障害児の母親に対する支援に関しては、子ども発達に主眼が置かれた心理教育的な支援の有効性が示されている。一方、臨床現場では、心理教育的アプローチでは母親のつらさに耳を傾けた援助となりえていない側面があるとの指摘も存在する。そのため、本年度は、発達障害児の母親への臨床心理学的援助に関連する先行研究に着目し、子どもとその母親を含めた家族支援の現状について調査を行った。 2.「子ども理解」「自己理解」構成概念の検討 発達障害児を育てる母親の「子ども理解」「自己理解」に関する構成概念の妥当性について検討することを目的とした調査を実施した。具体的には以下の通りである。 (1)幼児期の発達障害児を育てる母親に対して「子ども理解」「自己理解」の促進を目指したグループアプローチによる実践を行い、その活動の中で話された「子ども理解」「自己理解」に関する発言を収集した。 (2)上記で収集された「子ども理解」「自己理解」の内容の妥当性を検討するため、児童期の発達障害児の母親に対して「子ども理解」「自己理解」に関する面接調査を行った。 3.発達障害児を育てる母親への臨床実践 幼児期の発達障害児を育てる母親に対して「子ども理解」「自己理解」の促進を目指したグループアプローチによる実践を行った。実践した活動内容の違いによるアプローチの効果を測定する評価票を作成するため、それぞれの活動後に体験内容に関するアンケートを実施した。 今後は、上記の調査結果をまとめ、発達障害児の母親の「子ども理解」「自己理解」の指標を作成するとともに、幼児期の発達障害児を育てる母親に対するグループアプローチによる実践を継続し、「子ども理解」「自己理解」の変容過程と関連性および援助法の効果について研究を進展させる。
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