研究課題/領域番号 |
22730553
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研究機関 | 東京成徳大学 |
研究代表者 |
石村 郁夫 東京成徳大学, 応用心理学部, 助教 (60551679)
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キーワード | フロー体験 / ポジティブ心理学 / 強み / 健康生成 / 心理教育的介入 |
研究概要 |
【目的】本研究では、日常生活におけるフロー体験を促進させる健康増進プログラムを開発し、無気力や抑うつへの予防効果を実証することが研究目的である。 【内容】本年度は、フロー体験が生じる前提条件として、挙げられる「強み」(個人の振る舞い、考え方、感じ方に表れるその人らしさを構成する学習可能でポジティブな特性)に関して(1)どのように捉えられているのか、(2)フロー体験とどのような関連が見られるのか(フロー体験の前提条件の一つになりうるのか)、等の探索的な検討を行い、その上で(3)強みを焦点に当てたフロー体験を維持・促進させる心理教育で使用する教材研究を行った。 【結果】(1)強みや弱みをどのように捉えているかに関して大学生66名(男性30名、女性36名、平均年齢19.9±.57歳)を対象に実態調査を行った結果、強みを自覚している人は36.4%と少なく、強みを伸ばすことに対して興味がある人は57.6%いることから、強みに焦点を当てた介入の余地は十分にあることが検証された。(2)強みが活かされている時にフロー体験が生じているかに関して大学生206名(男性104名、女性102名、平均年齢20.51±2.23歳)を対象に質問紙調査を行った結果、強みが活かされている時にフロー体験が生じており、同時に弱みに向き合う頻度が高まっていることが示された。(3)従来の強みを測定する質問紙(VIA-IS,StrengthFinder,Realise2等)に加え、認知行動療法で利用される自己価値カードを参考にしてKJ法により60個の強みのカテゴリーを生成した。また、今後、心理教育で使用できるように60個のカード(縦91mm×横64mm)を作成し、(1)自他の強みを発見するワーク、(2)強みを自他に活用するワーク等のように強みの発見や活用を通してフロー体験を維持・促進させることを主眼に置いた心理教育テキストを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主たる目的であった心理教育テキストの開発は、初年度に実施されたフロー体験を維持・促進させる認知行動様式の抽出に基づいて、次年度、実態調査が実施され、さらにフロー体験を維持・促進させる心理教育テキストの作成が達成された。初年度に得られた研究知見に対して、次年度の実態調査によって科学的根拠も示されており、今年度は開発された心理教育的介入の効果検証が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、以下の2点が主眼となる。まず一点目として、引き続き、フロー体験を維持・促進させる心理教育テキストを改良し、調査協力者が高いモチベーションを持って参加できるように工夫することである。そのため、心理教育を楽しめるようにゲーム的要素を積極的に取り入れ、小集団ないし個別に対して適用し、その効果とプロセスに関して量的・質的な検証を行うことである。二点目としては、比較的容易に実施可能であり、一般に平易なプログラムの開発を目指すことである。実態調査からも明らかであるように、フロー体験は約25%の大学生が日常的に感じられず、さらに強みは約65%の人が自覚していないように、一般的にポジティブな特性や体験に関する理解が乏しい可能性が指摘できる。したがって、視覚情報を取り入れて簡潔な表現で構成される心理教育テキストに適宜改変していくことが望まれる。
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