研究課題/領域番号 |
22730554
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研究機関 | 跡見学園女子大学 |
研究代表者 |
酒井 佳永 跡見学園女子大学, 文学部, 准教授 (60349008)
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キーワード | 社会医学 / 医療・福祉 / リハビリテーション / 精神疾患 / 気分障害 / 産業精神保健 / 家族支援 / 心理教育 |
研究概要 |
会社を休職している気分障害患者の同居家族を対象に、体験した困難および必要だと考えるサポートについて構造化面接による調査を行った(N=5)。対象者は、患者との関係(母、妻、夫)、患者の診断(大うつ病性障害、双極H型障害)、罹病期間(2年6ヶ月~12年)など、様々な背景を持っていたにも関らず、(1)気分障害の症状に家族はどのように対応したらよいのかわからない、(2)医療機関に家族が相談できる窓口がない、(3)自立支援医療制度等の公的制度についての情報が得にくい、(4)患者が所属している会社の休職制度について患者から問い合わせするまで会社側からは情報提供がない、(5)家族が相談できる場所や相手が少ない、という困難が共通に語られた。これらの結果から、異なる背景をもつ家族であっても上記の困難については共通して体験されている可能性があると考えられた。よって家族対象の心理教育や支援プログラムでは、会社の休職制度や公的制度に関する情報提供、気分障害の症状に家族がどう対処するかについてのレクチャーや情報交換、そして日常の困難について家族同士で共有したり話し合ったりできる場づくり等が求められていることが示唆された。 また、復職支援プログラムを実施している医療機関(98施設)を対象に、家族支援プログラム実施の有無とプログラム内容、実際にあたっての困難点について質問紙調査を行った。回答が得られたのは43施設(回答率43.9%)であった。回答が得られた施設のうち、家族支援プログラムが必要だと回答した施設は40施設(93.0%)と9割以上であったが、実際に家族支援プログラムを実施しているのは8施設(18.6%)にとどまっていた。家族支援プログラムの実施が困難である理由として、マンパワーの不足、診療報酬上の位置づけがないこと家族のニーズが不明であることなどが挙げられていた。医療機関における家族心理教育は碁要だと考えられているものの、実施するにはさまざまな困難が伴うことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査対象者のリクルートが難航している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでに行った調査結果を踏まえ、家族への支援プログラムを実施するとともに、同居家族の負担の大きさと関連する要因について、より多くの家族を対象に調査を行う予定である。ただし、調査対象者となる患者家族のリクルートは難航している。この理由の1つに、対象者の募集方法がある。現在は、患者を通して家族に調査依頼を行っているが、患者は「これ以上家族に負担をかけられない」という理由で、家族への調査依頼に消極的であることが多い。今後は、家族会を通して調査依頼を行う、患者の外来受診に付き添ってきた家族に短時間のアンケートをお願いする、調査内容を整理し対象者への負担を減らすなど、リクルート方法や調査方法の工夫を行う。
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