本研究は、成人期に達した先天性心疾患患者の自立の状況とそれに関わる心理的特徴について明らかにすることを目的としている。本年度は、1. 昨年度から実施している調査を引き続き実施し、分析を行った。2. 昨年度までに実施した調査について、結果をまとめて学術雑誌に投稿した。 1については20歳~39歳までの成人先天性心疾患患者約150名、(統制群として)心疾患を持たない同年代の成人約120名に対して質問紙調査を実施した。調査内容は、現在の仕事や教育歴、疾患状態(患者群のみ)などデモグラフィックデータを収集する質問、心理的特徴として親子・友人関係、自立や社会的スキル、さらにうつ・不安、病気認知(患者群のみ)に関する質問であった。その結果、統制群と比較して患者群は教育歴には大きな差異はないが、常勤職より嘱託の仕事に就く率が高いこと、また心理的特徴として、年齢が高くなるほど疾患状態に拘わらず不安が高くなることが明らかとなった。その他の側面としては、患者の疾患状態は心理面に大きな影響を及ぼしていないこと、病気認知としては病気を肯定的に受け止めている患者が多いことが明らかとなった。今後の課題としては患者の就業についてさらに詳細な調査が必要であること、また心理面については年齢に合わせた支援が必要であることがあげられる。本調査については、さらに細かく分析中である。2については、昨年度まで行った調査をCirculation Journalに投稿し、掲載された。またさらに学会等での発表を2回行った。
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