本研究は、中学生の非行行動について、縦断調査を行うことにより、非行行動の開始時期によるリスク要因の違いを明らかにすることを目的とする。平成19年度から調査を開始し、小学校5年生から中学校3年生を対象に3年間にわたり縦断調査を実施してきた。平成22年度は、中学生1816名(中学校1年生628人、中学校2年生589人、中学校3年生599人)を対象に縦断調査の第4回目(平成22年度からの科学研究費による調査では第1回目)を行った。方法は質問紙調査である。これは、平成23年、平成24年度に行う縦断調査のデータの基礎となるものである。今年度は、横断調査の結果から、中学1年生~3年生までの問題行動の変化と、各学年の対人関係の変化を明らかにした。また、小学校6年生から中学校1年生への移行期における問題行動の関連について検討した。結果、小6時の抑うつの高さは、中1時の抑うつの高さと正の相関があること、小6時の親への暴力は中1時の親への暴力と正の相関があること、小6時の万引き/金品持ち出しは、小6時の親への暴力、中1時の親への暴力と正の相関があることが明らかになった。また、小6時の起床時間の遅さは、小6時の生活面での問題行動の量だけでなく、中1時での生活面での問題行動の量とも関連していた。今後、他の時期の問題行動の変化と、変化に影響を与える要因(親子関係や生活リズム変数、思春期における身体的変化)との関連を検討していく。本研究は、中学校時の問題行動のリスク要因を小学校時の要因から明らかにすることで、リスクの高い子どもに対し早期の介入が可能になり、生活指導面等の学校現場での実践に活かすことができる。また、中学校移行期を含めていることから、本研究の成果に基づき、中学校へのなめらかな移行や連携教育などの教育実践に対し有益な示唆を与えることができると考えられる。
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