本研究は、臨床心理士指定大学院の教育プログラムに導入可能である通常授業形式(毎週1コマのペースで半期間)と集中授業形式(数日間で通常授業形式と同コマ数分)を用い、臨床心理士等を目指す心理的援助者のトレーニングとして、ゲシュタルト療法の立場から体験的グループを別個の2群に対して実施し、統制群を加えた3群間でその効果を比較検討するものである。 平成22年度は、通常授業形式に参加した8名に対して計11回の体験的グループを、集中授業形式に参加した4名に対しては2日間で同等量の体験的グループを実施した。量的な効果測定指標として体験過程や感情体験に対する態度および身体に対する気づきを測定する尺度を採用し、統制群を含めた3群に対して年間3時点での縦断的な質問紙調査を行った。質的な効果測定として、体験的グループの様子を映像・音声データとして保存するとともに、毎回のグループ実施後に自由記述形式の質問紙調査を行った。体験的グループの終了後、数名の参加者に対しては個別に調査面接も行った。統計的に十分な参加者の確保はできなかったが、予備的な分析から、質的にも量的にも体験的グループの有効性を示唆する結果が一部で得られた。 なお、体験的グループの質や安全性を高めるためにスーパービジョン等を通じた検討は随時行われた。また、学会やワークショップを通じて最新の研究知見に触れる機会を作り、有益な示唆を数多く得た。得られたデータの一部は複数の学会等で発表を行い、体験的グループの実施法やその意義・効果に関する研究知見の社会的還元にも努めた。
|