研究課題/領域番号 |
22730567
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (00368416)
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キーワード | 遺族ケア / 死別 / 悲嘆 / リスク要因 / NICU / 医師 / ニーズ / 介入 |
研究概要 |
今年度は、どのような遺族が心理社会的に不適応な状態となるリスクが高いのかについて明らかにするため、NICUに勤務する医師を対象に質問紙調査を実施した。各施設の責任者を通じて、質問紙を186部配布したところ、140名から回答が得られた(回収率75.3%)。医師としての臨床経験の平均は、12.0年であった。「これまでに関わってきたご家族(ご遺族)の中で、特に死別後に配慮や支援が必要と思われた人はどのような方が多かったですか?」との設問に対して、あらかじめ設定した項目について複数選択式にて回答を求めた。その結果、「急変により子どもが亡くなった」との回答が64.3%と最も多く、次いで「患者の病気や病状などの現実を受け入れられていなかった」が45.7%、「自分を責める傾向があった」が40.7%であった。 またこの調査では、遺族のニーズに関して、56.4%が「遺族には大きなニーズがある」と回答し、35.7%が「大きくはないが遺族のニーズはある」と回答していた。ただ病棟として遺族ケアを行う必要があるかとの問いに対しては、行うべきとの回答が60.7%に対して、必要だと思うが現状としては難しいとの回答も32.9%みられた。病棟として遺族ケアを行ううえでの問題や障害としては、組織としての体制が十分ではないこと、病棟が行う支援の範囲が明確でないこと、援助者のトレーニングが十分ではないこと、配慮や支援の方法がよく分からないこと等が多く挙げられた。 遺族のリスク因子や、遺族ケアの必要性と課題などに関して、これまで看護師を対象とした研究は少しあるが、医師を対象とした調査はほとんどみられない。それゆえ、NICUという限られた領域の医師からの回答ではあるが、今回の結果の意義は大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
協力機関との調整が進まず、リスク評価に関する遺族への質問紙調査が滞っている。ただ一方で、新たな協力者及び協力機関を得ることができたことで、当初の予定にはなかった医師を対象とした調査を実施することができた。また、実践的な介入についても計画を前倒しして、準備が進んでおり、この点については順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、死別後の不適応リスクに応じた遺族ケアの方法を開発することであり、リスク指標の把握と評価法の検討、遺族ケアサービスの提供とその効果の検証を計画した。後者については順調に進展しているが、前者については、遺族調査が進まないなか、文献研究に加え、当初の計画を変更し、医師を対象とした調査を実施した。今後は、遺族調査の実施に向け鋭意努力するとともに、後者の実践介入のほうに軸足をおいて研究を進めていきたいと考えている。
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