今年度は不適応リスクの高い遺族への実践介入に関して、新たな方法の検討を行った。 一つは、「ワーク形式による介入」である。故人や本人をはっぱに喩えた独自のワークシートを開発し、故人への思いや、看取り時の思いを書いてもらうことで、遺族が自らの気持ちを整理する機会を提供した。加えて、その記述内容に基づき制作した映像作品を鑑賞してもらい、遺族同士が体験の共有を図ることも試みた。遺族への事後アンケートによると、ワークシートに記入することで、自分に向き合えたという意見が得られた。ワークは行わずに、作品を鑑賞したのみの人からは、物語の中に出てくるさまざまな意見が参考になったとの回答が得られた。これらの結果から遺族へ介入方法の一つとして、ワーク形式の有用性が示唆される。 もう一つは、「絵本の制作」である。絵本は、ときに遺族の悲しみを癒すことがあり、遺族ケアの選択肢の一つとして有用なツールとなりうると考えられる。調査1として、作成した2パターンの絵本(案)を大学生に提示し、物語としての筋道(分かりやすさ/感情移入/長さ/文体)、絵(色彩バランス/文字とのバランス/タッチ)などについて評価を求めた。調査2として、調査1を踏まえて改良された絵本(改良版)について、子どもを亡くした母親を対象に評価を求めた。その結果、絵本の有用性が示唆された。このような絵本によって、遺族会やカウンセリングのために家から出ていくだけの回復が出来ていない遺族に対し、家の中にいながらであっても何らかのケアの効果が得られるのではないかと期待される。
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