研究概要 |
本研究では、Kanterら(2008)によって開発された、抑うつのセルフスティグマを測定する尺度Depression Self-Stigma Scale : DSSS)の日本語版を作成し、その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。 1.調査対象:関東、関西、九州地区の3大学に在籍する大学生377名。回答に不備のあった者を除く371名を分析対象とした。男性149名、女性222名。平均年齢20.37(SD=1.46)歳。 2.実施尺度:(1)うつに対するセルフスティグマ尺度(Depression Self-Stigma Scale : DSSS):32項目、7段階評定。日本語版作成にあたっては、開発者より許諾を得、日本語に翻訳の後にバックトランスレーション作業を行った。その上で項目内容に原版と相違がないことを開発者と確認した。(2)CES-D抑うつ状態自己評価尺度:20項目、4段階評定。(3)Linkスティグマ尺度(Link,1987;下津ら,2006):12項目、4段階評定。 3.因子構造の検討:原著版と同じ、5因子構造をモデルとした確認的因子分析(重みづけのない最小二乗法)を行った。その結果、適合度指標は、GFI=0.965、AGFI=0.959、NFI=0.956であった。 4.信頼性・妥当性の検討:各因子のα係数は、第1因子がα=0.90、第2因子がα=0.83、第3因子がα=0.83、第4因子がα=0.73、第5因子がα=0.88であった。 並存的妥当性の検討として、Linkスティグマ尺度との相関を検討した結果、0.16~0.45の正の相関が示された。 5.考察:DSSS日本語版開発にあたり、因子構造の検討と信頼性・妥当性の検討の一部をおこなった。その結果、原著版と同様の因子構造が日本語版でも有用である可能性が示され、尺度の一定の信頼性と妥当性が確認された。今後、さらに対象者数を増やし、DSSS日本語版の有用性について検討していくことが課題である。
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