研究概要 |
本年度は、うつ病における否定的自己認知とセルフスティグマの関連を検討するために、以下の目的、計画による研究を実施した。 【目的】本研究は、うつ症状を呈した者の認知の偏りと、セルフスティグマとの関連を検討し、疾患回復における自己認知に関する認知的モデルを提唱することを目的とする。 【手続き】 調査対象者:2カ所の研究協力施設へ通院中のうつ病患者、およびうつ症状を持つ患者150名。 調査方法:質問紙への回答。回答にあたっては主治医による文書での説明と同意を実施した。 調査内容:(1)Dysfunctional Attitude Scale(DAS-24-J)::認知の偏りの程度を測定する。24項目。 (2)Center for Epidemiological Studies Depression Scale(CES-D:Radloff,1977;島ら,1985):うつ症状の程度を測定する。20項目。(3)自尊感情尺度日本語版(SE:山本ら,1982):10項目。(4)Linkスティグマ尺度日本語版(下津ら,2006):セルフスティグマの程度を測定する12項目。(5)抑うつのセルフスティグマ尺度日本語版(DSSS:下津ら,2011):32項目 【結果】現在データ回収中であり結果については解析中である(H23年3月末現在回収数124名)。 【意義・重要性】セルフスティグマが高いことは、中核症状の一つである否定的な自己認知を増強し、偏った信念を維持してうつ病からの回復を妨げるだけでなく、受療行動の不遵守や自尊感情を損なう要因となる。このため、本研究により、否定的自己認知とセルフスティグマの回復における認知的なメカニズムを明らかにすることは、うつ病治療へ多大な貢献ができると考えられる。
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