全国に58カ所設置されている児童自立支援施設は、その歴史的背景から「家庭的環境による育てなおし」をその主要な処遇としていた。 しかし一方で、これまでの育てなおしの処遇では対応しきれない子どもたちが数多く報告されるようになり、処遇の困難を訴える施設が増加してきた。そうした児童の背景には精神疾患、発達障害、被虐待などが見られることが多い一方、特に診断等を有しない児童も多く含まれていることが知られている。 本研究では、そうした診断の有無にかかわらず職員が処遇上「気になる」児童の実態はどのようなものであるのかを調査し、施設の成り立ち上、様々な処遇形態をもつ児童自立支援施設で、どのように児童の最善の利益を保証していくか検討を行った。 調査の結果、児童自立支援施設の「気になる児童」の特徴として以下の点が明らかになった。 (1)処遇の難しい児童のうち、全体の半数は診断を受けていない状態であること。 (2)男子児童と女子児童では、男子はより発達障害傾向が見られ、女子では精神疾患傾向がみられる。 (3)女子児童は年齢が上がるにつれて処遇の難しさが増加する一方、男子児童は年少児童ほど処遇困難が見られる。 以上より、児童自立支援施設での処遇については、現在特に分類処遇や発達段階などは特に考慮されていないが、非行性の除去等に際してはより発達的な観点が加味される必要があると同時に、職員の専門性として「見立て」の専門性が必要となることから、チェックリストを作成し配布した。
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