研究概要 |
1.Ford Insomnia Response to Stress Test(FIRST)を用いた不眠症のリスクファクターの検討 FIRSTで測定される「ストレス誘発性の睡眠反応」は,不眠症発症のリスク要因となることが指摘されているが,十分な検討は行われていない。そこで,ストレス誘発性の睡眠反応と不眠症症状の関係性を検討するため,一般成人者204名を対象に調査を実施し,構造方程式モデリングを用いた検討を行った。その結果,ストレスを自覚すると睡眠反応(FIRST)が高まり,(1)直接,不眠症状を悪化させる,(2)非機能的信念を介して間接的に不眠症状を悪化させることが明らかとなった。また,発症素因の一つである特性不安は,ストレス誘発性の睡眠反応とは独立して不眠症状の悪化に影響を及ぼすこともあきらかとなった。 2.不眠の認知行動療法による再発因子の改善効果に関する検討 不眠の認知行動療法(CBT-I)によって,不眠の再発を予測することが指摘されている「ストレス誘発性の睡眠反応(FIRST)」が減少するかどうかはこれまで検討されていない。そこで,慢性不眠症患者64名をCBT-I実施群と薬物治療群に振り分け,治療前後FIRST得点の比較を行った。その結果,CBT-Iは,薬物療法に比べて不眠症状尺度(Athens Insomnia Scale)得点が有意に減少した。また,FIRST得点に関しては,CBT-I群にのみ治療後に有意な軽減が認められた。以上のことから,CBT-Iは,不眠の再発要因を軽減し,再発を予防する効果が期待できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
FIRSTの改善が,再発予防のマーカーとなるかどうかについて検討するため,本研究期間中に認知行動療法を実施した不眠症患者に対して,FIRSTおよびAISを郵送にて配布する。 また,当初計画していた不眠症患者の注意に関する検討について,Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)では特定の注意問題しか測定できない。そこで,注意のどの過程で問題が生じているかを検討できるAttention Network Tsetを利用する。
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