【不眠の認知行動療法による不眠症状と再発因子の改善維持効果に関する検討】 平成23年度に申請者が行った,「不眠の認知行動療法(CBT-I)による再発因子の改善効果に関する検討」によって,CBT-Iは薬物療法に比べて不眠症状(Athens Insomnia Scale: AIS によって測定)が有意に改善すること,不眠の再発を予測することが指摘されている「ストレス誘発性の睡眠反応(FIRST)」に関しては,CBT-I群にのみ治療後に有意な軽減が認められた。本研究は,その維持効果を検討することを目的とした。 上記研究でCBT-Iを完遂し,その1ヶ月後のアンケート調査に同意が得られ,回答が得られた者14名を対象に,不眠の改善度とFIRSTの変化について検証した。その結果,(1)対象者のうち,AISのカットオフ値(AIS = 6点)未満だった改善者は11名(79%)であり,全員1ヶ月後もカットオフ値を下回っていた。一方,非改善者のうち,1ヶ月後に改善した者は1名(50%)であった。 FIRSTの変化率について,Cohen's d を算出したところ,「治療前-治療後」間の効果サイズは小さかったものの(d = -0.43),「治療前-1ヶ月後」間は中程度になっていた(d=-0.52)。また,「治療後-1ヶ月後」の効果サイズは-0.11と小さかった。 以上のことから,CBT-Iによって減少したFIRSTは,治療後も維持されており,これがCBT-Iの改善効果の維持につながっている可能性が考えられた。
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