研究課題
本研究課題では、物体視と運動視の相互作用がわれわれの安定した知覚の礎となっているという観点から、物体視の運動視の相互作用について調べることを目的としている。本年度は、運動処理にとって重要な脳部位との関連が指摘されているオブジェクト置き換えマスキング(OSM)におけるプレビュー効果、3次元オブジェクトの到達時間予測におけるオブジェクト輪郭明瞭度の影響、横スクロール文字の認知について調べた。OSMはマスク刺激をプレビューすると大幅に減弱することが報告されているが、プレビュー時とターゲット呈示時でマスク刺激の表面特徴、具体的には色を突然変化させることで、プレビューにも関わらずOSMが再び生じることを明らかにした。これは、突然の特徴変化によって、視覚系がプレビューによって干渉効果を失っていたマスク刺激を干渉すべき新たなオブジェクトとして再認識したためと考えられる。この成果は、国内外の学会で発表するとともに、視知覚関連の専門誌に投稿する予定である。また、到達時間推測課題において、接近オブジェクトの輪郭をぼかすと輪郭が明瞭な場合と比べて到達時間が遅く見積もられること、またその程度は輪郭のぼけ具合とともに増大することを明らかにした。これは、輪郭のぼけ自体が奥行き手がかりとして機能することを示す先行知見に一致するが、輪郭がぼけることで奥行き手がかりとしてのサイズを小さめに見積もっている可能性も考えられる。さらに、日本語ひらがな単語を文字サイズを変えながら横スクロール呈示して読字閾値を測定する実験を行い、最適な単語幅は3.6s゜付近、最適文字サイズの範囲は0.5~1.0゜であることを明らかにした。これらの成果はいずれもThe 6th Joint Workshop on Machine Perception and Robotics(MPR2010)で発表され、視知覚関連の専門誌に投稿する予定である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Journal of Cognitive Neuroscience
巻: 23 ページ: 247-256