研究課題
本研究課題の目的は,物体視と運動視の相互作用が我々の安定した知覚の礎であるという観点から,物体視と運動視に関わる現象について調べることである.本年度は,これまでの2年間に引き続き,運動処理に関わる脳部位との関連が指摘されているオブジェクト置き換えマスキング(OSM)におけるマスクプレビュー効果,3次元仮想空間上での到達時間(TTC)推定におけるオブジェクト輪郭ぼけの影響についてさらに検討した.OSMにおけるマスクプレビュー効果については,プレビュー時とターゲット呈示時でマスクの色を突然変化させるとプレビューにより減弱していたOSMが復活するという成果を国内誌上(基礎心理学研究)で発表した.さらに,マスクの色変化が生じる位置とターゲット呈示位置の距離を操作した実験を行い,ターゲット呈示位置近傍に限局してマスクの色変化によるOSMの復活が生じることを明らかにし,この成果を国際学会(ECVP2012)および国内学会(日本基礎心理学会)で発表した.TTC推定における輪郭ぼけの効果については,これまでの2年間で,接近オブジェクトの輪郭をフィルタ処理でぼかすと輪郭が明瞭な場合と比べてTTCが遅く見積もられ,その程度がぼけ具合とともに増大することが明らかになっていた.本年度は,輪郭ぼけの効果がどの処理段階で生じているのかを特定する目的で,単眼観察条件と両眼観察条件で輪郭ぼけの効果を比較した.その結果,輪郭ぼけによりTTCが遅く見積もられるという効果が再確認されたが,単眼条件と両眼条件でその効果に有意差はなく,輪郭ぼけが主に単眼性情報のレベルで影響する可能性が示された.この成果を国際ワークショップ(MPR2012)で発表した.この他にも,自動車運転時の前方車の急停止に対するブレーキ反応時間の確率密度分布と覚醒状態の関係性,野球の内野手における打球の方向予測などについて調べた.
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
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